
2025年の今、日本には「生理休暇」という制度があります。これは、女性が生理によって体調がすぐれないときに、会社に申し出ることでお休みがとれるというもの。労働基準法第68条にしっかりと定められている、立派な“法律で守られた権利”なんです。
実はこの制度、なんと戦後すぐの1947年からある歴史ある制度。世界的に見ても、とても早い段階で導入されていたことはあまり知られていないかもしれません。
でも現実はというと…
「制度があるのは知ってるけど、なんとなく使いづらい」
「周りの目が気になって、結局我慢しちゃう」
そんな声が、今も多くの女性たちから聞こえてきます。中には、「そんな制度があるなんて知らなかった!」という若い世代も。
せっかくの権利が、うまく活用されていないのはどうしてなのでしょうか?
今回は、生理休暇の基本から、実際にどれくらい使われているのか、そして職場の雰囲気や本音など、今のリアルな声をもとに分かりやすく紹介していきます。
目次
1. 取得率はわずか0.9%。数字が語る“使われない制度”
「生理休暇って本当に使われてるの?」
そんな疑問に対して、答えはちょっとショッキングかもしれません。
厚生労働省が発表した「令和2年度雇用均等基本調査」によると、**実際に生理休暇を請求した女性の割合は、たったの0.9%**だったんです。100人働いている女性がいたら、たった1人しか使っていないという計算になります。
法律でしっかり認められている制度なのに、どうしてここまで使われていないのでしょうか?
その背景には、**「周囲の目が気になる」「職場に言い出しづらい」「理解されにくい」といった空気感や、「そもそも制度の存在を知らなかった」**という情報不足など、さまざまな理由があるようです。
また、「体調が悪くても“我慢するのが当たり前”という雰囲気がある」「休んだことで評価が下がりそうで不安」など、働く女性たちの本音には、制度と現実のギャップがにじみ出ています。
この0.9%という数字、実は単なるデータではなく、多くの女性が声を上げづらい現状を象徴しているのかもしれません。
2. 「誰も取ってない」「雰囲気が悪い」——取りづらい原因の実態
生理休暇の取得率がわずか0.9%という驚きの数字には、さまざまな理由が隠れています。
制度があっても「実際には使いづらい…」と感じる女性が多いのは、単に“制度が知られていない”だけではないんです。
ある調査によると、女性たちが生理休暇を使わない理由として、こんな声が挙げられています:
- 周囲が誰も取っていない(43.9%)
- 必要性を感じない(32.4%)
- 仕事が忙しくて取りにくい雰囲気(27.8%)
- 人手が足りない(18.8%)
- 上司に言いづらい(18.5%)
特に大きな壁となっているのが、「心理的なハードル」。
例えば、上司が異性の場合、どうしても言いづらく感じる人が多く、**実に61.8%もの女性が“異性の上司への申請に抵抗がある”**と回答しています。
「誰も取っていないから、なんとなく自分も我慢してしまう」
「体調はつらいけど、忙しいから遠慮してしまう」
「言ったら“サボってる”って思われそうで怖い」
そんなふうに、職場の空気や人間関係が“申請のしやすさ”に大きく影響しているのが現状です。
本来は、無理をせず体を休めるための制度のはずなのに、気をつかって遠慮してしまう女性が多い――これが、生理休暇が“あるけど使われない”理由のひとつなのかもしれません。
3. 職場の理解と現実のギャップ
「うちの職場は理解がある方だと思う」
そんなふうに感じている人も多いかもしれません。
実際、Job総研が2023年に行った調査では、**「職場に生理休暇への理解がある」と答えた人が75%**にものぼりました。
数字だけを見ると、理解はだいぶ広がっているように見えますよね。
ところがその一方で、実際に制度を利用した女性はわずか12.8%。
このギャップは、「理解がある」と言われながらも、実際にはまだ“取りにくい空気”が残っていることを物語っています。
たとえば、「制度があることは知ってるけど、使うと迷惑をかけてしまいそう」「制度のことを話題に出すのがちょっと恥ずかしい」など、**表には出にくい“心の壁”**があるのかもしれません。
さらに注目したいのが、「制度の名前に違和感がある」という声。
調査では、97.2%の女性が『名称を変えたら、もっと利用しやすくなる』と回答しています。
「“生理”という言葉を使うことで、かえって申請しにくい」「デリケートな体調不良の一種として扱ってほしい」など、“言葉のハードル”が心理的負担になっているケースも多いようです。
名前ひとつで、気持ちがぐっと軽くなることもありますよね。
制度そのものをより身近に、もっと使いやすくするには、「理解」だけでなく、**日常の中で自然に使えるような“仕組み”や“言葉の選び方”**も大切になってきそうです。
4. 海外との比較で見える、日本の課題
「日本の生理休暇って、実はすごく早い時期から導入されてるんだよね」
そんな話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
実際、日本では1947年から労働基準法によって生理休暇が法律で認められているんです。
これは、世界的に見てもかなり早い取り組みといえます。
でも、他の国と比べてみると、制度がある=使いやすいとは限らないことがよくわかってきます。
たとえば、お隣の韓国では月に1回まで生理休暇を取得でき、診断書も必要ありません。
ただし、日本と同様に無給であるため、取得率には課題があると言われています。
台湾では月1回まで半日分の給与が支給される“半給休暇”が認められており、なんと学生にも制度が適用されているのが特徴的です。
そして今、特に注目されているのがスペイン。
2023年に導入された制度では、「月経困難症」などの診断があれば国が費用を負担する“有給”の生理休暇が取れるようになりました。
これは世界でもかなり先進的な取り組みで、医師の診断書は必要ですが、女性が無理せず働ける環境づくりが進んでいることがうかがえます。
このほか、インドネシアやフィリピン(公務員のみ)、**スイスの一部地域(チューリッヒなど)**でも、生理に配慮した休暇制度の導入が進められています。
ただ、制度そのものが存在しない欧州の国も多く、生理に対する考え方や福祉のあり方は国によって大きく異なるのが現状です。
こうして見てみると、日本は制度としては整っているものの、“無給”であることや、社会的な空気の影響で実際には活用されにくいという課題があることが浮き彫りになります。
これからの時代、ただ制度が「ある」だけでなく、誰もが安心して使える“仕組みづくり”や“文化”が求められているのかもしれません。
5. 今後の課題と改善のヒント
生理休暇という制度そのものは、日本ではすでに長く存在しています。けれど、「ある」ことと「使いやすい」ことは別問題。
今後、本当にこの制度を活かしていくためには、いくつかの改善ポイントがありそうです。
■ 制度の認知と周知徹底
まず前提として、制度自体を知らない人が意外と多いという現実があります。
特に若い世代の中には、「そんな制度があるなんて知らなかった」という声も。
これは、企業側の情報発信や周知の工夫がまだまだ足りていないことを意味しています。
社内ポータルや入社時の説明、定期的なリマインドなどを通して、もっと身近な存在にしていく必要がありそうです。
■ 心理的なハードルを下げる工夫
「申請しづらい」「言い出しにくい」といった心理的な障壁を取り除く工夫も欠かせません。
たとえば――
- 「生理休暇」という名称自体が申請のハードルになっている人が多いため、名称変更を検討する
- 異性上司に伝えにくい場合を考慮して、同性上司や人事部などへ直接申請できる仕組みを整える
- 手続きが面倒に感じられないよう、申請方法をできるだけシンプルにする
といった、小さな配慮の積み重ねが、制度を“使いやすく”する第一歩になります。
■ 業務体制の見直しもカギ
特に医療・介護・建設業など、現場が忙しい職種では、「休むとその分のしわ寄せが…」という現実的な声もあります。
このような業種では、人員配置や業務分担を見直したり、代替要員をあらかじめ確保したりするといった体制づくりが重要です。
制度を導入するだけでなく、それを運用できる余裕を持った職場環境が必要になってきます。
■ 「無給」から「有給」へのステップも
さらに根本的な話として、「無給だから使いにくい」という声も根強くあります。
**収入が減ってしまうのなら、多少体調が悪くても出勤してしまう…**というケースも多いのではないでしょうか。
そのため、今後は無給から有給への転換や、診断書なしで使える制度の明確化など、法制度の見直しも大きな課題になっていきそうです。
まとめ:制度が“あるだけ”では意味がない
生理休暇は、本来であれば女性が無理をせずに働き続けられるようにするための、心強い制度です。
法律でしっかりと認められた権利であり、長年にわたって存在してきた制度でもあります。
ところが現実はというと、取得率はわずか0.9%。
「使えるけど、使いにくい」「言い出すのが恥ずかしい」「周りに迷惑をかけそうで遠慮してしまう」など、制度を活用できない空気が職場に根強く残っているのが現状です。
また、制度の名前や申請方法、職場の体制など、使いにくさにつながる要因が複雑に絡み合っていることも分かってきました。
「制度があることを知らなかった」
「異性の上司に伝えるのが気まずい」
「忙しい職場では自分だけ休めない」
——そんな現場の声は、決して珍しいものではありません。
こうした状況を少しずつでも変えていくには、制度の存在を正しく知ってもらう努力と同時に、実際に使える環境を整えることが必要です。
たとえば、名称の変更や申請のしやすさ、体制の見直し、さらには**“無給から有給へ”という制度のアップデート**も、今後の大きな課題となるでしょう。
制度が「ある」ことだけでは不十分。
誰もが安心して、当たり前のように使えることこそが、本当の意味で制度が“機能している”状態ではないでしょうか。
私たち一人ひとりの理解や意識が少しずつ変わっていくことで、より働きやすく、優しい社会に近づいていけるのかもしれません。